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REGENERATIVE CIRCLE

GOLDWIN AND SPIBER, BREWED PROTEIN™ COLLECTION

ネパールの神聖な川を見下ろす丘の上で育ったツナイナ。こうした環境で過ごした幼少期は、現在ミュージシャンやビジュアル・アーティストとして活動する彼女の中に環境に対する深い感謝の気持ちを育むこととなった。さらに、その経験は音楽制作のインスピレーションとなり、聴く者を深く優しく包み込み、人間の感情と自然界の類似性を紡ぐ。そして、自ら監督を務めたミュージックビデオ『WATERWAYS』では洞内滝の前で歌声を窟内に響かせた。現在、彼女はロンドン北部で暮らしている。自然光がたっぷりと降り注ぐ窓から隣接する公園を見渡す彼女は、自然から離れたこの場所で暮らす自分自身に新たな生命を吹き込み、再生を繰り返す。

自宅から徒歩圏内の公園には壮大な芝生やテニスコート、ランニングコースがあり多くの人で賑わう。そんな中でもひとりでリラックスできる場所を見つけるのが上手。

自宅兼スタジオに招いていただいてありがとうございます。早速音楽の質問を。制作をするなら朝派ですか? 夜派ですか?

実はどちらでもないんです。友達と一緒に映画をみたり、ライブに行ったり、何か制作とは別のことを考えている時にアイディアが思い浮かぶことが多くて。意地悪いことに、追い求めていない時に、です。

きっと忙しくしている方がいいんですね。

何時間もただ座って自分に真剣に向き合って、何かを頑張って引き出そうとしたこともありました。うまく行かないこともないんですが、実際に音楽にした時に動機が純粋ではないと、音にも違和感が現れてしまう気がするんです。だから今は無理やり頑張って振り絞ろうとせずに、自然にオーガニックにアイディアが浮かぶのを待つようにしています。

家族や友人からのギフトはツナイナにとってかけがのない宝物。自宅にはそんな思い出のアイテムやペインティングなどがディスプレイされている。
ツナイナが着用しているのはBrewed Protein™繊維を使用したThe North Faceのオービットマウンテンジャケット。

今はどんな音楽を制作しているんですか?

もうすぐ新しいEPが完成するところ。私にとってははじめての大きなプロジェクトです。今はそのためのビジュアル制作などをしている最中ですね。

楽しみですね!

心配の種が尽きません。でも、今まで感じてきた、考えてきた、そしてやってきたことが報われる瞬間でもあります。

これまで発表してきた楽曲は、人間の感情と自然を結びつけるようなものでした。新しいEPにもそのコンセプトは引き継がれていますか?

自然が私の感情を引き出してくれるというテーマは共通しています。それは自然だけに限られたことではないのですが、いずれにしても内面が外に映し出されている作品であることは変わりません。私の場合は、その感情があまりにも大きすぎて境界線を超えてしまう。日常的な感情が次第に大きくなり、それが魔法のようなエネルギーに変わるような感覚です。

自然との繋がりを感じるようになったきっかけについて教えてください。

私が生まれ育ったのは、ネパールの、小さな町のさらに郊外です。そこにはインターネットもなかったですし、両親がそばにいることも少なかったので、野原で遊んだり、てんとう虫を捕まえたりして遊んでいました。そんな環境で育ったことが大きく関係していると思います。ロンドンのような大きな街にいると、目に見えない、目に留まらないものからどんどんと切り離されていくような感覚になります。生活することに精一杯で、たとえば今日の空のこと、今日歩いた道のことにまで思考を巡らせる余裕がない。ネパールではというと、私が育った町であろうが、首都のカトマンズだろうが、どこにいても山脈を見渡すことができる。つまり自然のことを考えずにはいられないんですね。幼少期から自然とものすごく近い距離で日常を過ごしたおかけで、自然との繋がり、そして自然に感謝するという気持ちが芽生えたのだと思います。

大都会で暮らす今でも自然は重要なインスピレーション源のひとつ。

ネパールの話になったので、その頃に聞いていた音楽の話を教えてください。

親戚とよく遊んでいた「アンタークシャリ」という遊びがあります。聞いたことありますか? 南アジアでは知らない人はいないというほど有名な遊びで、ひとりが音楽にのせて即興で歌い、その隣の人は、前の歌の最後の文字に繋がるように即興で歌っていく。いわゆる音楽のしりとりです。しばらくアンタークシャリをしていると、一緒に遊んだみんなで同じ曲を歌えるようになる。そのメンバーだけの、その時だけの特別な音楽ができあがっていくんです。それから最近母と話をしている時に思い出したのですが、子供の頃自分のテーマソングを作って歌っていたらしくて。とりあえず元気だけが取り柄だったので、ぐるぐると走りながら「♩才能ある小さいツナイナが、キャンディー持って走りまわる♩」。これがはじめて作った曲です。

リビングの真ん中にあるゆったりとしたソファからは公園の緑を望むことができる。そんな自宅や近くの友人宅で過ごす時間が息抜きに。
大都市の中心部とは思えないほどに自然豊かな公園。芝生にねっころがり風を感じる瞬間。
故郷ネパールを彷彿とさせるアイテムが並ぶツナイナの自宅。

その曲からはじまって今はEPを制作中! 一体どんな音楽を聞いてきたのですか?

南アジアの曲ばかり耳にしていました。家族や友人との生活、そして作中に歌とダンスが繰り広げられるボリウッド映画。音楽が生活の至るところにありましたから。それからは、インターネットで色々な音楽に触れてきました。さっき話たようにインターネットが通じていない場所で育ったので、ものすごく世界が広がりましたよ。いろんな地域の古典音楽やさまざまなジャンルの音楽を知るきっかけになりました。

ナチュラルな風合いと光沢感が美しいThe North Faceのオービットマウンテンジャケット。

今着ているジャケットは人工的に生成されたタンパク質でできたBrewed Protein™️繊維を使用し、再生に適した洋服として作られています。「人工」と聞いてどういう印象を持ちますか?

今の時代だとネガティブな印象を受けやすい言葉ですよね。人工的に作られたものに抵抗や恐れを感じる人もまだ多いでしょうから。でも、農業や林業、それにヘルスケアまで、私たちを取り巻く多くのものに人間の手が介されています。そして私たちは、それらがないと生活することが困難になってしまう。日々あらゆるテクノロジーが生まれ、そしてアップデートされていく社会の中で生きる私たちは、人工と自然物の間に境界線を設け、ある種偏見的に、人工のものを恐れ、避けている。大事なのは知恵を使って、どのように寄り添いながら生活していくかだと私は思います。そういう意味でこのBrewed Protein™️繊維は共生のありかたを提案してくれているように思います。触り心地も従来のマウンテンパーカーのようにナチュラルですし。

また今回のプロジェクトのキーワードとなっているのが“Regenerative=再生”という言葉です。再生と聞いてイメージできること、そして個人的に再生していると感じる瞬間はありますか?

私の解釈では、“再生”という言葉の意味は、目的を終えたもの、あるいは美しさを失ったものが忘れ去られないように新たに命を吹き込むことだと思います。個人的には、(自分自身を指差しながら)私自身が前時代的な人間にならないように、ある意味での再生なのかな? 再生するために、ひとりもしくは限られた友人たちと過ごす時間は大切にしています。外界からシャットオフしたひとりの時間は、自分自身を見失わないこと、そして自分自身を心地よく思うきっかけを与えてくれるものです。そして自信を持つことこそ、再生するために必要なことだと思います。

未来は明るい?

私の弟がいる限り(笑)。彼を含めた若い世代の人たちが自分の欲求や感情を表現できるようになったことは素晴らしいことだと思っています。そして、そんな若い世代が社会を変えてくれたことで、私よりも上の世代、例えば私の母やその友人たちもまたオープンになってきているように感じます。オーシャン・クリーンアップのような環境保護活動の参加者も増えていると聞きます。こうして私たちの社会は、より多くの考え方や思想を受け入れる多様な社会に移り変わっている。だから未来はポジティブだと思いますよ。

TSUNAINA ツナイナ

ネパール出身、ロンドン在住のミュージシャン、ビジュアルアーティスト。2020年にデビューシングル『Waterays』を発表し、そのエレクトロニックとオーケストラ・サウンドを融合させた神秘的な楽曲と個性的なボーカル、独自の世界観をもった歌詞で注目を集める。

https://tsunaina.com/@tsunaina
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